マニュアル・運営改善

属人化からの脱却!!
【事例ごとの対処法】

こんにちは!たいらです。

先日、こんなご相談を頂きました。

異動で生産性ガタ落ちしちゃって。属人化が浮き彫りになっちゃって。

おっとこいつぁおいらの出番だぜなんつって。そういえばあんまり属人化の弊害には触れてこなかったな、なんつって。

そもそも異動というのは様々な目的があります。わかりやすいもので言うと

  1. 適材適所に要員を配置することで生産性を向上させる目的
  2. 人間関係の悪化や独裁的な組織構築を抑止する目的
  3. 個人の要望やステップアップに配慮する目的

このあたりにそれらの玉突きを加えたものが一般的かなぁ、と感じております。玉突きというのは穴埋めの穴埋めの穴埋め・・・みたいなやつです。組織が大きければ大きいほど発生しがちでして、1人の異動のために気付いたら5人の異動が必要になってたなんてことも珍しくないのでは。

至極当然のことですが、異動になった側は少なからずこれまでと異なった業務にあたることになるので一定、一時的な教育コスト、生産性低下リスクは発生します。これは退職、採用においても同様です。

上述の通り属人化は望ましくないものとして認識されていることが多いものの、対策に加えて防止策が必要なものとして捉えている企業はさほど多くないかもしれません。今回はそれらについて解説していきます。

属人化とは何ぞや

凪のようにまっさらな心でまずはGoogle神に問いかけてみました。

企業などにおいて、ある業務を特定の人が担当し、その人にしかやり方が分からない状態になることを意味する表現。 多くの場合批判的に用いられ、誰にでも分かるように、マニュアルの作成などにより「標準化」するべきだとされることが多い。

weblioより引用

ですって!!マニュアル作成で標準化すればいいらしいですよ!

ここから始まる私のお話がポジショントークではないことが客観的に証明されたところで清々しく本題に入っていきましょう。(ドヤァ

その人にしかやり方がわからない状態、これが企業にとってのリスクということです。急な退職や不正といったわかりやすいリスクもありますが、本人以外にその業務の必要性、生産性を判断できる人がいないというリスクにも注視しなくてはなりません。

小さな規模の企業であれば属人化はある程度免れないと思います。属人化を前提にプロジェクトを進めている場合もあるでしょう。ところが一定規模以上の企業においても人知れず業務が属人化してしまっているケースも多々見受けられます。聞き方には配慮する必要がありますが、

どうしてその仕事やってるんですか? なぜその方法なのですか?

この質問に対し、明確な回答が返ってこなければ既に属人化の不利益が生じている可能性があります。「前任者にこうやってやれって言われたから・・・」と言った回答がその最たるものです。とはいえ、その人を問い詰めることが得策とは言えません。

属人化は個人の問題ではなく、組織で取り組むべき課題として認識しましょう

また、個人発信で業務改善を提案し、組織がそれに乗っかるというのは素晴らしいボトムアップです。とは言え勝手に業務のやり方を変えたり省いたりすることはむしろ属人化を招いてしまうことを理解しておいてください。

私はこうやった方が効率的だと思うからこうやってます

じゃあ組織でそのやり方への変更を検討しましょうよって話です。熟練度や個性に大きく依存するならば組織でそれを容認ないし推奨しましょうよって話です。

具体的な事例

「属人化」と言ってもその種類や根深さ、リスクの大きさなど様々です。どういったものがあるのか具体的な事例を挙げていきましょう。

事例1:発注方法、問い合わせ先が不明

まずは単純でわかりやすいものから。

さすがに大した問題じゃないのでは・・・

大きな問題として顕在化することは少なくても、これも立派な属人化になり得ます。事務用品や一般的な消耗品発注であればいくらでも解決策は見つかるでしょう。しかし、

  • 特殊な機器のメンテナンスに関わる問い合わせ先、消耗品発注先が不明
  • お客様、クライアントにご使用いただく備品を補充する際の発注先、型番が不明
  • 個人の端末で連絡を取っていたため取引先担当者のアドレス、番号が不明

とかってなってくるとなかなか厄介です。急な退職や疾病といったことも充分に起こり得ますから。

事例2:経理業務が一人しかいない

以前実際にあったご相談なのですが、小規模の企業や事業所だと経理を1人に任せっきりのケースがあると思います。無理して複数人に分けるような業務でもありませんし。

ただし、長年1人に任せっきりだと以下のようなリスクが発生します。

  • 月次決算等、どう考えても忙しい時期以外の業務、生産性が不透明
  • やろうと思えば不正し放題(収入印紙の現金化等)

家族とか信頼できる人にのびのびと一生任せる前提じゃなきゃいけないのか

保険屋でもないですし、いたずらに危機感や不安感を煽るつもりもないですが、ご相談頂いたケースでは親近者の仕事ぶりや不正に対する不信感がベースでしたので無策はやはりおすすめできないです。

経理ならずとも、脈々と儀式のように受け継がれてきた業務が別の立ち位置から見るとひどく生産性が低かったり、なんなら不要だったりすることもあります。別の部署でダブルチェックを潜り抜けてきたものをさらにチェックかけてるとか。いやいや一発でチェックできるツールなり仕組みなりを考えましょうよって。

事例3:異動後も取引先から指名で連絡される

これ結構私も経験してます。なんなら加害者側に回ったこともあるので懺悔させていただきますと、例えばこんなケース。

  1. 取引先の広告代理店の制作担当者と親しかったため、ラインで連絡を取っていた
  2. 紙に手書きで発注物のゲラや校正内容を書いて写メールで送っていた
  3. 引継ぎ後、社用メールでのやり取りでは進捗が追い付かず私が指名連絡を受ける

これは後任たまったもんじゃないですよね・・・すみませんでした💦決して後任の能力に問題があったわけではなく、出張が多い部署だったので私もやむを得ずそのような方法を取っていたんです。私が担当から外れたところ、こちら側でボール持ってる時間が長くなって極端にテンポが悪くなり、私に「校正お願いできませんか?間に合わないです・・・」と。

一方でこちらが発注先であった場合には先方のエゴで以前の担当者と話がしたい、なんてケースもあったりしませんか?以前の担当者が発注先のわがままをさんざん飲んでいて、新担当がお断りしたところ

おめーじゃ話になんねーや。○○に変わってくれや。

みたいな。請求書を変に月跨いで分けてくれとか、お尻をこの数字に合わせて見積もり作ってくれとか。イメージですよ、イメージ💓

事例4:特殊な業務への対応

いわゆるルーティンワークであれば異動等による影響はさほど大きくないし、何より予測がつきます。しかし個人の能力、判断への依存度が高いほどトラブルや散発的な業務への対応力が低下します。管理職以上ならまだしも、決裁権限を持たない一般職は右往左往。

  • 顧客からのイレギュラーな要望、クレームを個人の裁量で裁いている
  • 決裁ルート上に太いパイプを持ったスタッフが外れ、社内の根回しが利かなくなる
  • 特殊なスキルを持ったスタッフが、それを活かした業務フローにしている

「こんなときどうする!?」の経験値によって一定の生産性、対応力を確保していたものが、一人の異動によって途端に機能しなくなってしまう。前任者が感覚や人間関係値で業務をこなしたり振り分けたりしていると、異動後ちょっと特殊な業務が発生しただけで組織機能の脆弱性が露呈してしまうことになりかねません。

特殊なスキルというのは例えば「マクロ組める」だとか「イラストレーター使える」とかをイメージしてもらえるとわかりやすいかと。

特殊なスキルで生産性上げてたヤツが悪者だって言うのかよ!

そうじゃないんですよ。特殊なスキルを用いて生産性を上げるならば、個人に依存せず組織で対応できる状況にしておかないとリスクを抱えることになりますよ、と。マクロ組んだ人が外れたらその帳票のメンテナンスを誰もできない、そんな状況を放置しておくといずれ大変なことになりますから。

属人化の発生要因

上記の具体例を通じて既に答えが出ているものもありますが念のため整理しておきます。冒頭に述べた通り、属人化は組織で取り組むべき課題です。が、発生時点での要因に目を向けることでより正しく無理のない解決策を講じことができます。

個人に問題があるケース

悲しいかなどこの世界に行ってもこんな人はいるものでして。

ほんっと、この会社はあたしがいなきゃ回んないんだもの

とか言っちゃってる、思っちゃってそうな人。根本的には自信の無さに起因するものなような気はするんですが、保身のために自分しか触れない領域を恣意的に作り出しています。業界では爆弾抱えたがりマンと呼ばれています。はい、私だけですけど。

  • 共有すべきツールやデータを個人のフォルダ、デスクトップで管理する人
  • 特定の役職者等から個別に仕事が降ってくるよう差し向けてる人
  • 縁故の外注先を廉価で使い倒して他者による再現性の無さをふんわりアピールする人

最初のは論&外として2番目みたいな人身近にいないですか?直属の上司ならまだマシなんですが、特に他部署から仕事引っ張ってきて「いやぁ、頼まれっちゃって・・・」みたいな人は要注意。組織構造よじれちゃいますから。

最後のは一見良さそうにも思えるんですが、安い外注先って組織にとっては麻薬みたいなもんです。後半部分、他者による再現性を担保できるのか、事前に確認しておいた方が良いでしょう。変な癒着とか、次年度の予算圧迫といった副作用が発生するかもしれません。

組織に問題があるケース

上のケースもあくまで発生時点での要因です。組織が個人をマネジメントできてないことに問題があるので、どこまで行っても根源要因は組織にあると考えましょう。組織が変わらなければ健康的に個人の変容を促すことはできません。

組織に発生要因がある属人化とはどのようなものがあるのでしょうか。

  • 業務の詳細手順をプレイヤーに任せている
  • 業務分掌の明確化が足りていない
  • 業績に深く関わらない部署や現場の業務に対する理解度が浅い

企業内での経営方針等に注力するあまりに、ミクロの視点を置き去りにしているとこういった事象が発生します。当然と言えばそれまでなのですが💦

上の組織が企業単位でも事業所単位でも部や課でも同様です。トップがどこまでプレイヤーの行動規範や詳細手順に関心を持っているかで組織の風通しは大きく変わります。経営層や中間管理職がプロパーなら比較的問題は発生しづらいでしょう。一方そうでない場合、極端に悪く言うと経営層がプレイヤーの業務実態を把握しておらず、夢のような経営方針の発信だけに終わってしまいます。

結果としてプレイヤーは各個人の物差しで業務効率や生産性を判断し、俯瞰的視野でパフォーマンスの最大化を図る役割を担う人が実質的にいない、という状況に至ってしまうわけです。はい、これこそが属人化を育む風土です。

属人化の解決における考え方

マニュアル作成によって業務を標準化しよう!!

これが結論であることに変わりはありません。しかしながら、闇雲に「マニュアルってこういうやつでしょ?」で取り組んだところで属人化に奏功するとは限りません。一人で作って一人で発信したところで見向きもされなかったり、マニュアル作成が属人化したのでは元の木阿弥ですから。

作成時の重要なポイントについては以下の記事にまとめてあります。

ここでは属人化脱却にフォーカスしたマニュアル作成の考え方に触れておきます。

業務の棚卸をしよう!

マニュアル作成範囲の全体でどれだけの業務が行われているかを可視化する必要があります。多くの場合、全ての業務を把握している人はいません。

あ、いや、誰もやってないんでいつも自分がやってるっす

といった業務が必ずと言っていいほど出てきます。それらをできるだけ漏れが無いようにピックアップしましょう。作成者本人がその業務内容を理解できない場合もあるので、「あなたは何の仕事をしていますか?」をリスト化してもらって回収するのが最もわかりやすくて効率的です。テキストエディタでもメールでも構いませんし。

このプロセスを踏むことで、本人が意図的に属人化させている「爆弾抱えたがりマン」の業務を白日の下に晒すことができます。あくまで理論上の話ですが。そのためにはトップの指示の元で業務の棚卸を行っているんですよ、という印籠が必要なので協力を仰いでください。

人ではなく役職、担当に業務を紐づけよう!

「なぜあなたがこの業務をやっているのか」の問いに対して、「この役職、担当だからです」という答えができるように分掌を整理します。そうすれば引継ぎに係るコストを抑えながらその役職、担当に応じた業務マニュアルを参照して新任が業務にあたることができますから。もちろん業務の質やスピードに関してはすぐに前任レベルを求めるのは酷なのでそこは共通認識として持っておきましょう。

ちょっとややこしいのが先に上げた個人の特殊なスキルを業務に活かしている場合ですね。後にも触れますが、「特殊なスキルを持ってるからやっている」のか、「この役職、担当には特殊なスキルが必要」なのかを線引きしておかなければなりません。

急な異動、退職に耐えられる強靭なマニュアルを!

常々私がマニュアルの重要な役割として唱えているのが、「新人採用時の教育ツール」としての有用性です。それに加えて急な異動や退職に耐えうる強靭なマニュアルとは・・・

ハードルたけぇな、おい・・・

ごもっともです。だからこそ、上のリンク記事にも書いたのですが100点をいきなり目指そうとせず、60点のマニュアルをブラッシュアップしていくという意識が大切なんです。

全体の20%が優れた設計ならば実用上80%の状況で優れた能力を発揮する。

Wikipediaより引用「パレートの法則」

上記「業務の棚卸」「役職、担当への紐づけ」を含めた目次作成が全工程の20%です。それらに詳細手順を加えることによりまず60点のマニュアルを作りましょう。こういってはなんですが、全ての起こり得る事象に対応できるマニュアルなんて一生できっこないですから。60点のマニュアルを作成、運用してそれを定期的ないし発生ベースで追記、リバイスすることを習慣化することを目標とすれば良いのです。

各事例毎の対応策

マニュアル作成により属人化が防げますよ、というのは口を酸っぱくして述べているわけなんですが、先に上げた各事例において

  • なぜマニュアル作成によって解消できるのか
  • 作成時にどういった点に注力すれば良いのか

こういったところを端的に解説したいと思います。

事例1:発注方法、問い合わせ先が不明

言うまでもなく「リスト化して整理しましょう」ってことになります。それではなぜマニュアル上にそれを記載するのが望ましいと言えるのか。

整理さえしとけば別にマニュアルじゃなくたっていんじゃね?

そういったお声もあるとは思います。けれどもリスト化して整理されたデータが他人からみてどこにあるのかわからなければ意味がないですよね。業務に関わる発注先リストだからマニュアル上で共有しましょう、これが当たり前になれば探す手間も省くことができます。

事例2:経理業務が一人しかいない

これもきちんとマニュアルを当人に作成してもらいましょう。その際大事なことは言い方。不審がられているんだろうか、業務が増やされてしまうんじゃないだろうか、といった不安に充分に配慮しながら作成に必要な時間を確保できるようフォローします。

一人に業務を任せっきりにすることが会社にとってリスクとなり得ること、業務内容を可視化することにより全体の効率化が図れる可能性があることを丁寧に説明して協力を仰ぎましょう。

事例3:異動後も取引先から指名で連絡される

マニュアルを作成していると気付くことがたくさんあります。

ん?これ他の人だと再現性低くね?企業として不健康じゃね?

実は業務改善とマニュアル作成を同時並行させることはあまりおすすめしていません。単純に手が止まってしまうので。しかし問題を問題として把握するきっかけにはなりますし、すぐに改善すべきであるとの判断がなされるのであれば改善後のオペレーションを記載すべきでしょう。

事例2にも同様のことが言えますが、「引継ぎマニュアル」ではなく「業務全体のマニュアル」を作成することを強く意識してください。コミュニケーションコストに大きく影響することになりますので。

事例4:特殊な業務への対応

業務手順だけではなく、マニュアル上で考え方やマインド、FAQを整理することにより自走できるスタッフの育成が可能となります。何を大事にして業務に取り組むべきなのかの優先順位や、収益性とCSのバランス感覚などが挙げられます。

特殊なスキルに関しては、いわゆる「ジョブ型雇用」なのかそうでないのかの明確化が必要です。レベル感はさておき、この役職、この担当に配属するためには「マクロを組む」という能力が必須なのか、配属後に身に付けなくてはならないのか。

前者であれば既にマクロに関する基礎知識がある人向けのマニュアルを作成すれば良いですし、後者であれば基礎知識から盛り込む、もしくは学習方法について触れておくべきと言えるでしょう。

まとめ

マニュアル作成による属人化脱却計画を述べてきました。これまとめでいつも書いてる気がするんですが、マニュアル作成は大変なんです。ただし、属人化を解消する度に張り付いて引継ぎを行ったり、一定規模の人事異動が発生する度に生産性がガタ落ちすることを防ぐため、産みの苦しみは免れません。

大まかな作成手順については以下の記事にとりまとめています。

組織として異動や退職による生産性低下リスクを抑制するためには、属人化からの脱却が不可欠です。そしてクリティカルな解決方法はマニュアル作成しかありません。

これを読まれている方はきっと既に猫の手も借りたい状況なのはお察しいたします。然るべき人からリソースを確保してもらった上で、実践的なマニュアル作成に取り組みましょう😀

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